立教女学院は,アメリカ聖公会から日本へ派遣された宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズにより,1877年,今の文京区湯島に創立されました。すでに「切支丹禁止」を布告する高札が撤去されていたとはいえ,まだまだキリスト教に対する偏見が色濃く残っていた時代です。その時代にあって,女性が教育を受けること,それもキリスト教に基づく教育を受けることは,高い知識と豊かな人間性を育て,女性に自由に生きる力と,自らの考えをもち主体的に生きる姿勢を与えてくれました。偏見や因習が渦巻く時代を生きる女性たちにとって,どれほど大きな希望の光となったことでしょうか。

 その後,現在の久我山に移転してきたのは1924年,その前年の関東大震災で当時の校舎が全壊したことにより,より広い土地を求めてのことでした。宣教師をはじめ多くの方々の祈りとアメリカ聖公会からの莫大な献金により,現在の高等学校の校舎や講堂,礼拝堂が建てられました。そして,当時は小さな苗木だったクスノキや,今では冬にクリスマスツリーになるヒマラヤスギ,春にかぐわしい香りと彩を添えるフジなど,今日までの長い年月が,生徒たちが毎日を過ごすこの豊かな学びの空間を作り上げていったのです。

 中高6年間は,人生の中で最も心が成長する時です。友人と意見をぶつけながらも,語り合い,笑いあい,新しいことを知る喜びや,知らなかったことに気づく驚きを経験し,生徒同士,また生徒と教師が,かけがえのない時間を共有しながら,この豊かな環境の中で学校生活を送ります。そして,悩み苦しみながらも,生徒たちは自分の考え方,生き方を模索し,自分はどう在りたいか,どう生きていきたいかを考え,自らの手でつかみ取ろうと前に進みます。何を大切にして生きていくのか,まさにその人の人格が形作られていくときなのです。その学びと心の成長は,やがてはミッションスクールで学んだ者としての精神や思いとなり,広く世界の平和の実現に向けての大きな力となっていきます。

 立教女学院は今年で創立147年,久我山へ移転してきてちょうど100年目を迎えました。今も変わらないのは,生徒の1日が礼拝で始まることです。礼拝は,神様への賛美と音楽への愛を,生きる勇気を,そして何事にも感謝する気持ちと他者のために祈る心,苦難を乗り越える力を与え,生徒たちの心の成長を支えてくれます。その中で生徒たちは,神様に出会い,神様はいつも私たちとともにいらして私たちを見守っていてくださるという確かな安心感に包まれて,今日も,自由に,生き生きと学校生活を送っています。

2024年4月
校長 浅香 美音子